早朝の陽光の暖かさに酩酊して
黄色い蝶がひとつよろめき飛ぶ
眠そうに身をかがめた老人が
窓辺にすわって休んでいる
昔 彼は歌をうたいながら
春の若葉の中を出発した
たくさんの道のほこりが
彼の髪を白くおおった
たしかに花ざかりの木と
蝶たち あの黄色い蝶たちは
ほとんど老いを知らず
今もあの頃と同じように見える
けれど昔より色は褪せ
香りは乏しく感じられ
光はいっそう冷ややかに
空気は重く 息をつくのも困難になった
春はかすかな蜜蜂の羽音のように
春の歌を 優しい歌を口ずさむ
空は青く白くひろがり
蝶は金色にひらひらと飛び去ってゆく
~ヘルマン・ヘッセ~
Monday, February 26, 2018
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