「本宮社の森」の植生について、大分市教育委員会が調査し、『大分市の文化財』にその報告書が掲載されているので、その主要部分を抜粋し転載する。
雲霧帯の性格をもった森
西寒多神社の奥の院にあたる本宮神社は、本宮山の標高550メートル付近の尾根に鎮座している。ここの境内林の植生調査結果を組成表(素表)に掲載した。この森はアカガシ、ウラジロガシ、アカシデ、タブノキ、ヒサカキの優先度が高い。
表6の常任度表と比較した結果、この森はアカガシ、ハイノキ、シキミ、ミヤマシキミの適合度が高く、これらを標微種とするアカガシ―ミヤマシキミ群集に同定できた。この群集は常緑広葉樹帯の上限付近に成立し、着生のシダ植物やコケ植物が多く雲霧帯の性格をもっている。アカガシの枝の幹の低い位置から伸びて風圧に強く、尾根や山頂に生育できる。
大分県では、宇佐神宮奥宮の院の御許山(647メートル)山頂の大元神社境内林(ここは御許山の山頂が御神体)、宇目町鷹鳥屋山(639メートル)の鷹鳥屋神社の境内林、日田市戸山(707メートル)の戸山神社の境内林、清川村御嶽山(560メートル)の御獄神社の境内林、緒方町大石樫山(宮尾国有林)などのアカガシ―ミヤマシキミ群集は範型となる森である。
大分市では、本宮社境内林のほかに霊山青年の家(現在は廃止)の上方にこの群集が広く残っている。また、高崎山北斜面・大谷東尾根の標高450メートル付近にこの群集の残存林がある。
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